-パリ・マルモッタン美術館展- |
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印象派の聖地 心地よいある春の日、あたたかな陽射しのなかで、少女たちがサクランボをたのしそうにつみとっている。ベルト=モリゾ(1841-1895年)のこの「桜の木」は、のどかで幸福な日常の一情景を自然の光のなかでみごとにえがきだす。 2004年3月、東京都美術館で開催された、パリ・マルモッタン美術館展をみる。マルモッタン美術館は、パリ郊外に1934年に創設された美術館であり、すぐれた印象派のコレクションを有することでひろくしられ、「印象派の聖地」ともよばれている。 1996年には、女性画家ベルト=モリゾの作品があらたに寄贈され、この美術館の質量はさらに充実した。ベルト=モリゾは、印象主義を代表する画家でありながらあまりしられることはなかったが、モリゾに対する関心は世界的に高まってきているという。 今回の展覧会は、このベルト=モリゾの作品のほか、クロード=モネ(1840-1926年)などの、今日まで日本に公開されることのなかった同美術館の作品の数々を初公開するという企画である。
自然を直接えがく クロード=モネの作品では「睡蓮」がとくに印象にのこった。今回公開された3点の「睡蓮」は、同一主題をことなるバージョンとして記録した連作であり、季節・天候・日時によってことなるその場の「光」をみごとにとらえている。 モネは、わかき日に海景画家ブーダンにであい、室内でえがくのではなく、戸外で自然を観察しながら直接えがく方法をおしえられ、うつろいゆく光の変化と大気の印象を、実に様々な光の中でカンバスにえがきとどめていったという。これは、スケッチと記憶をもとにして室内で創作活動をおこなうという従来の方法ではなく、野外へでて、自然を観察しその場で直接えがくという、当時としてはあたらしい方法である。 これらの印象派の絵画は、やや はなれてみると、一瞬の光、色のかがやき、色調の変化がよくみえ、全体的な雰囲気がみごとにつたわってくる。 今回の展覧会を通して、戸外へでて、自然や情景をそのままに観察し、その場で刻々と変化していく「自然の光」をとらえていくことの大切さをおしえられた。
参考文献:『パリ・マルモッタン美術館展』(カタログ)、坂上桂子監修、美術出版デザインセンター制作、日本テレビ放送網発行、2004年。 |
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