広域調査と定点調査

山梨県南巨摩郡増穂町
<調査現場>
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地質調査の方法

地域の「急所」をとらえる

フィールドワークの3段階

 

 


2004年3月31日発行

 

 地質調査の方法

 わたしは、1992〜1993年にかけて山梨県南巨摩郡増穂町において、水力発電所建設のための地質調査の仕事に断続的に従事した。調査地域の位置をつぎの地図にしめす。

 

調査地域の位置(地図はYAHOO!MAPS(Alps Mapping)による)

 

 地質調査では、まず、地形図をみながら広域的に地表をあるき、露頭とよばれる地層や岩石が地表に露出している所を丹念にしらべていく。そして、えられたデータを地形図上にプロットし、地層や岩石の平面的な分布や構造をあきらかにする。

 その一方で、地質構造をしらべるための重要なポイントにおいてボーリングをおこない、地層の垂直的な分布や構造をしらべる。ボーリングをおこなうことによって、地表ではみることがむずかしい地層の垂直断面を連続的に直接観察することができる。一般的には、下位の地層ほどふるく、上位の地層ほどあたらしく形成されているので、ボーリングにより地層形成の歴史をしることもできる。

 地表の広域的な調査によってもある程度は地層の断面は想像できる。しかし、直接観察をおこなうボーリングによって、地層の断面は決定的にあきらかになる。とはいっても、お金がかかるボーリングを調査地域内において無数におこなうわけにはいかない。そこでまず、地表の広域的な調査をおこない「地質平面図」をつくり、その上で、「ここぞ」という部分に対してのみボーリングおこなうことになる。つまり地質調査では、「地表調査→ボーリング→地質構造の解明」という3段階のプロセスをふんで、その地域の地質構造の全容を解明していく。地質構造が解明されれば、地質学的な歴史(地史)を考察することも容易になる。

 

 地域の「急所」をとらえる

 このような調査方法において、地表の調査が「広域調査」であるのに対して、ボーリングは「定点調査」ということができる。そして、「広域調査」と「定点調査」の結果を総合して考察をすすめていくということになる。この「広域調査→定点調査→地域構造の解明」というプロセスにおいては、定点調査で「ここぞ」という場所をいかにえらぶかが決定的に重要になる。「定点調査」は調査全体の「急所」である。えらび方に失敗すると大きな成果がえられない。

 しかし、地域の「急所」をうまくつかまえれば、「定点調査」によって、地域の内容を構成するさまざまな要素の関連があきらかになってくる。

 そして、地域の重要なその要素を指標にして、そのひろがりをあらためて追求していくことができる。仮説をたて、それがどの程度のひろがりをもって適用できるのか、こんどは広域的に調査していくのである。「定点調査」をへないで、ちょっとしたおもいつきで広域をとらえ即効をねらうのは、実はまちがった判断をうみ、仕事の効率もあがらない。

 

 フィールドワークの3段階

 このような、「広域調査」と「定点調査」とをくみあわせて「全体」と「部分」を体系化していく方法は、地質学以外の分野でも有効であり、事実、地理学者や人類学者も同様なことをおこなっているのである。たとえば彼らは、かなり広範囲に情報収集をおこなったうえで、問題とする一箇所にすみこんでくわしい調査をおこなっている。これは、地域をベースにした事業たとえば国際協力などをおこなう場合にもとるべき重要な方法である。

 けっきょく、地域調査あるいはフィールドワークは、「全体をみる→部分をみる→地域の本質をしる」という3段階の方法でおこなうのがよく、同時にここに、「全体」と「部分」というフィールド(地域)を成立させている基本原理をみることができる。第1段階はふかさはないがひろがりがある。それに対して第2段階はひろがりは小さいがふかさがある。これらがあるからこそ、第3段階の考察がみのりゆたかなものになりえる。地域が、地理的にも歴史的にもとらえられると、地域の本質がうかびあがってくるのである。

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