推理と対決 -『刑事コロンボ』研究 -
17.二つの顔 “DOUBLE SHOCK”
目 次
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まえがき
01.殺人処方箋
02.死者の身代金
03.構想の死角
04.指輪の爪跡
05.ホリスター将軍のコレクション
06.二枚のドガの絵
07.もう一つの鍵
08.死の方程式
09.パイルD-3の壁
10.黒のエチュード
11.悪の温室
12.アリバイのダイヤル
13.ロンドンの傘
14.偶像のレクイエム
15.溶ける糸
16.断たれた音
17.二つの顔
18.毒のある花
19.別れのワイン
20.野望の果て
21.意識の下の映像
22.第三の終章
23.愛情の計算
24.白鳥の歌
25.権力の墓穴
26.自縛の紐
27.逆転の構図
28.祝砲の挽歌
29.歌声の消えた海
30.ビデオテープの証言
31.5時30分の目撃者
32.忘れられたスター
33.ハッサン・サラーの反逆
34.仮面の男
35.闘牛士の栄光
36.魔術師の幻想
37.さらば提督
38.ルーサン警部の犯罪
39.黄金のバックル
40.殺しの序曲
41.死者のメッセージ
42.美食の報酬
43.秒読みの殺人
44.攻撃命令
45.策謀の結末
考察 -コロンボの方法-
参考文献
作品評価

キーイメージ

 家政婦のペック夫人が、パリス邸を車で出ていくパリスの甥を見送る。

DVDチャプターリスト

(1)老花ムコの死 (2)同じ顔が二つ (3)残された花嫁 (4)警部、テレビに出演 (5)銀行マンと料理プロ (6)ペックさんのテレビ (7)遺言状の問題 (8)さらなる被害者 (9)どっちが真犯人?

犯行の動機

(1)富豪クリフォード=パリス(第1被害者)は年齢的にはすでに初老の域に達していたが、年若いリサ(第2被害者)にほれこんでしまい、リサと結婚することにした。パリスには身内として甥(犯人)がいたが、もし、パリスがリサと結婚してしまうと、巨額な遺産はすべてリサのものになってしまう。甥としては、これは絶対にゆるすことはできない。
 結婚式の前日、パリスの甥デクスターはパリス邸をおとずれ結婚のお祝いを言い、その後、家政婦のペック夫人に窓越しに見送られながら、スポーツカーでパリス邸をあとにするが、またもどってきて、電気ミキサーをつかって入浴中のパリスを感電死させる。
(2)おどろくべきことに、パリスは、結婚するかしないかにかかわらず全財産をリサにのこすという遺言をつくっていた。このままでは全財産がリサのものになってしまう。弁護士のハサウェイの提案により、リサから遺言状をとりあげようとするが、ハサウェイが彼女の部屋へ行ったときにはリサはすでに死亡していた。

コロンボはいつどこでピンときたか

(1)パリス邸の浴室で、ぬれたタオル・浴槽・石けんを見つけたとき。
 パリスは入浴をしていたのではないか。パリスの遺体はトレーニングルームで発見されたが、トレーニングの前に入浴をするというのは妙だ。これは事件であるにちがいない。
(2)パリスの婚約者リサが死亡した直後に、デクスターの家でデクスターと話しをしていて、話がおわろうとしたとき。
 パリス邸の停電が回復するのにかかる時間をしらべれば、犯人は一人なのか、共犯者がいたのかをたしかめられることに気がつく。コロンボはさっそくパリス邸に行き、浴槽からヒューズがある場所まで行くのにかかる時間を計測する。

犯行を裏付ける事実

 家政婦のペック夫人は、浴室のタオルは毎日午後4時にあたらしいものと取りかえる(ぬれたタオルがあったのは変だ)。パリス邸の防犯装置は作動しなかった。パリスが、フェンシングをやったあとで、またトレーニングをはじめたというのは妙だ。庭の植え込みに扁平足の足跡がのこっており、デクスターは扁平足だった。
 パリスの遺体を解剖した結果、感電死であることがわかった。事件当夜、テレビが20秒ほど消えた。
 双子の兄弟のデクスターとノーマンは、10日間で20回以上も電話していた(2人は絶縁状態だと言っていたがそうではなかった)。

コロンボはいかにして決着をつけたか

 コロンボは、パリス邸の浴室にデクスターとノーマンをつれていく。コロンボは浴槽に入り、ノーマンにもちあげるように言うが、重いため一人ではもちあげることはできない。
 つぎに、浴槽に水をいれ、電気ミキサーを浴槽におとしてショートさせ、パリス邸を停電させる。すぐに小走りで地下へむかう。ヒューズのところまできて、ヒューズをなおし停電を回復させる。コロンボは言う。
「ヒューズをいれるのに67秒かかっています。だがペックさんのテレビは20秒しか消えなかった(It took us sixty-seven seconds. But Mrs. Peck’s television set was out for only fifteen seconds)」
 かかった時間は67秒であった。しかし事件当夜は15秒ほどで停電は回復した。これは、停電したときにヒューズの前に共犯者がすでにいて、すばやくヒューズを交換したことをしめしている。つまりパリス殺しは一人では決してできず、デクスターとノーマンは共犯であったのである。
 事件当夜、車でパリス邸をでていったのはデクスターではなく、実は、おなじ服をきた双子の兄ノーマンであった。家政婦のペック夫人は見事にだまされたのだった。

解説:犯行を再現して実証する

 コロンボは、バスルームの様子をみたときに、これは他殺であることに気がついたが、犯人に目星をつけることはできなかった。
 そして、パリスのもうひとりの甥ノーマンがやってくる。ノーマンの登場は、頭をなやますことになる。二人は犬猿の仲であり、犯人は、デクスターなのか、ノーマンなのか。誰にもわからない。
 さらにリサが殺され、これには、弁護士ハサウェイがからんでいる。
 ますます混乱してきたが、コロンボは、もう一度原点にたちかえり、犯行を忠実に再現することをこころみた。犯人は、どのようにして計画を実行したのか。
 そしてコロンボは、パリス邸の浴室からヒューズのある地下室まで行くのにかかる時間を、ストップウオッチをつかって正確に計測し、時間のくいちがいを発見した。それが67秒と20秒であった。
「それには誰かがここでまちかまえててヒューズをいれるしかない(There had to be somebody else waiting down here to replace that fuse)」(コロンボ)
 犯人たちは、実に巧妙な計画をたてたが、ここまでは気がついていなかった。
 コロンボは、えられたデータと推理にもとづいて犯行を実際に再現してみせ、2人の共謀であることを実証した。犯行を再現してみせることにより決着をつけたという訳である。


tanokura.net 2005年12月25日発行
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