推理と対決 -『刑事コロンボ』研究 -
06.二枚のドガの絵 “SUITABLE FOR FRAMING”
目 次
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まえがき
01.殺人処方箋
02.死者の身代金
03.構想の死角
04.指輪の爪跡
05.ホリスター将軍のコレクション
06.二枚のドガの絵
07.もう一つの鍵
08.死の方程式
09.パイルD-3の壁
10.黒のエチュード
11.悪の温室
12.アリバイのダイヤル
13.ロンドンの傘
14.偶像のレクイエム
15.溶ける糸
16.断たれた音
17.二つの顔
18.毒のある花
19.別れのワイン
20.野望の果て
21.意識の下の映像
22.第三の終章
23.愛情の計算
24.白鳥の歌
25.権力の墓穴
26.自縛の紐
27.逆転の構図
28.祝砲の挽歌
29.歌声の消えた海
30.ビデオテープの証言
31.5時30分の目撃者
32.忘れられたスター
33.ハッサン・サラーの反逆
34.仮面の男
35.闘牛士の栄光
36.魔術師の幻想
37.さらば提督
38.ルーサン警部の犯罪
39.黄金のバックル
40.殺しの序曲
41.死者のメッセージ
42.美食の報酬
43.秒読みの殺人
44.攻撃命令
45.策謀の結末
考察 -コロンボの方法-
参考文献
作品評価

キーイメージ

 デイル=キングストンが二枚のドガの絵を額縁からはずす。

DVDチャプターリスト

(1)メイン・タイトル (2)コロンボ登場 (3)コロンボ、ヌードに照れる (4)消された共犯者 (5)遺産の行方 (6)デイルが仕掛けた罠 (7)真犯人はエドナ? (8)二枚のドガの絵 (9)エンド・クレジット

犯行の動機

 絵画コレクターの富豪であるランディ=マシューズ(第1被害者)は、自分が所有するすべての絵画を元妻エドナにゆずると遺言を変更した。本来なら、彼の甥であり、美術評論家のデイル=キングストン(犯人)がゆずりうけるはずだった。
 それを知っておどろいたデイルは、すべての絵画を自分のものにする計画をたてる。叔父ランディを殺害して、元妻のエドナに濡れ衣をきせれば、エドナは相続権をうしなうことになる。

コロンボはいつどこでピントきたか

 ランディ=マシューズの自宅に行って、被害にあった絵の状況の説明をうけたとき。
 犯人は、最初は、名画ではない(高価ではない)バーンバウムの絵をぬすもうとした。しかし、結局ぬすんだのはもっとも高価なドガの名画(パステル画)2枚であった。どうして最初から高価なドガの名画をねらわなかったのだろうか。
 バーンバウムをぬすもうとして、ランディ=マシューズにみつかって、彼を殺害して、それから急に目が肥えてドガの名画をうばったことになる。これは妙だ。単なる強盗殺人ではない。

犯行を裏付ける事実

 犯人が侵入したとされるドアは外からは決してあけられないし、防犯装置も作動しなかった(共犯者が中にいた)。デイルが個展に行ったときの時刻を、彼に会った人があまりにも正確に記憶している(デイルが確認させた)。元妻エドナの自宅付近から銃が、また自宅からドガの絵画をつつんでいた紙がみつかったが、犯人ならとっくに処分したはずである(見つかるのはかえって変である)。美術学校の女子学生トレーシー(共犯者・第2被害者)が死亡した。デイルは、エドナの自宅を家宅捜索するように仕向けた。

コロンボはいかにして決着をつけたか

 エドナの自宅の家宅捜索がすすむ。そして「二枚のドガの絵」が発見される。
「この絵も僕がもちこんだんだって。証明できるか!(You claim I panted these paintings. Suppose you prove it!)」(デイル)
「できるよ。指紋でな(Yeah, with fingerprints)」(コロンボ)
「指紋なんて役にたたんぞ。僕の指紋はどこにでもついてるはずだ。どの絵も僕の指紋だらけさ(Fingerprints won’t help you at all. My fingerprints are all over those paintings. They’re covered with my prints)」(デイル)
「いや、君の指紋じゃないんだよ(No, we’re not looking for your prints)」(コロンボ)
「え?(What?)」(デイル)
「この絵にはあたしの指紋がある(My fingerprints are on these paintings)」(コロンボ)
「いや、これは何かの罠だ。きたない手はやめてくれ。あんた、たった今こいつにさわって指紋をつけたんだよ。僕が気がつかないうちに。きたないぞ!その手・・・(No, no. This is entrapment. It’s a set up. That’s all. You touched those paintings just now while I wasn’t looking. You touched… You…)」(デイル)
 そのとき、コロンボはポケットから両手をだして、あげてみせる。なんと、手袋をしているではないか。
 コロンボは以前、デイルが、絵をもって自宅にかえってきたとき、見せてくれと言ってその絵にさわった。その絵は実は「二枚のドガの絵」であり、そのときにコロンボは故意に指紋をつけたのだった。
 つまり、コロンボの指紋は、デイルが、「二枚のドガの絵」を自宅からエドナの家にもちこんだことを証明する決定的証拠となった。

解説:意表をつく

 絵のコレクションをすべて元妻のエドナにおくると、叔父から知らされたデイルは、叔父を手にかけ、その罪をエドナにきせようとした。現行法によると、被相続人を殺害した人間は相続権をうしなう決まりになっている。こうしてデイルはぬすまれた「二枚のドガの絵」をエドナの自宅にかくしたのである。
 しかしコロンボはデイルの行動を読んでいた。ぬすまれた絵はデイルがもっている。それに指紋をつけてしまえば、あとで絵が発見されたとき、それがデイルのところから移動したことを証明することができる。
 こうして、デイルをおとす場面にいたったのである。
 コロンボは、美術の本をかりたいと言って、デイルから自宅のキーをかりて彼の部屋に入り、彼がかえってくるのをまっていた。デイルは、かえってきたとき絵をもっており、それは水彩画だと言ってごまかしたが、コロンボは、見せてくれと言って鞄の中に強引に手をつっこんだ。このとき、絵に指紋をつけることに成功したのだった。
 「二枚のドガの絵」がでてきて、コロンボが指紋をしらべると言ったとき、誰もが、そんなことしても意味がないとおもう。しかし、その指紋は犯人のものではなく、コロンボのものだったことを知らされ、おどろく。コロンボは犯人の行動を予見し、あらかじめ証拠を仕込んでおいた。指紋をつける場面は、あとでそこを見返してみるとそういうことだったのかと理解できる。
 最後に、コロンボが無言で手をあげたとき、すべての謎が一気にとけ、同時に事件も解決する。まったく意表をつく決着のつけ方であった。


tanokura.net 2005年12月25日発行
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